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L.A.シーンに突如出現した希代のビートメイカー/プロデューサー、フライング・ロータスは<ワープ>移籍後にリリースしたEP 『Reset』(2007年)、新時代のビート・ミュージックの先駆けとして各方面から多大な評価を集めた前作『Los Angeles』(2008年)により、その後世界中で同時多発的に勃発、波及していくこととなるビート・ミュージック/ ベース・ミュージックにおける鮮やかな革命の礎を作り、その後3部作となるプレミア12シリーズ『L.A. E.P』により(ここ日本においてはエレグラWarp20来日を記念し1枚にまとめた『L.A. CD』としてリリース)、シーンを急速な成熟へと向かわせた。数多のフォロワーを生み、予想を遙かに越えた衝撃を世界の音楽シーンに与えた。彼を含め、注目を集めたL.AのLOW END THEORY(ロウ・エンド・セオリー)周辺のみに留まらず、多彩なビートを打ち鳴らす新世代のフレッシュなビート・メイカー達が世界各地でほとんど同時期に一斉に出現、新たなシーンを形成していく中、ロータスはその中心人物として、ビート・カルチャーの寵児として、そして最も旬なアーティストとして、エレクトロニク・ダンス・ミュージックだけでなく、全てのジャンルの熱心な音楽ファンから常にその動向が注目を集めた。彼のサウンドは単なるギミックとしてではなく、自分が鳴らしたいビート、人に聴かせたいグルーヴを本能の赴くままに積み上げていこうとする、新しいサウンドをアウトプットすることへのピュアな想いとひたむきなパッションに溢れている。実際に彼はそれを自然体で実行へと移し、象徴的なタイトルと共に最新作を完成させた。ダークで美しい色調のサウンドスケープ、メランコリックな空気感、ソウルフルで内省的な音風景、想像力を掻き立てる深遠なコントラスト、緻密かつ壮大なプログラミング。そして、折り重なるテクスチャーとレイヤーが重層的にブレンドされることで紡がれる激しいエレクトロニックの渦、乱れ飛ぶバンギング・ビートとコズミックでスペイシーなシンセによって誘われるディープな陶酔感覚。それらが変幻自在に、且つ混然一体となって迫り来る。本作で重要なトピックの一つは、必然的なコラボレーションだったと言っても過言ではないトム・ヨーク。かつてオウテカの『Con?eld』がそうであったようにトム・ヨークが共同作曲を行い、歌い上げたこの1曲が今後のレディオヘッドのサウンドに与える影響は計り知れないのではないかと確信出来るほど、両者の特性が惜しげもなく引き出され、ぶつかり合うことで生まれた衝撃的トラック。この『コスモグランマ』によって、フューチャリスティックな“スペース・オペラ”がまたもやスタンダードになる日は近い!!