• VOLKUTA
  • ROOM FULL OF RECORDS
  • HOUSE Blog
  • わたさんの『これが、ハウスじゃ。』
  • HOUSE Twitter
  • Joe Claussell
  • DJ Harvey
  • THE LOFT
  • ene tokyo
  • Crosspoint
  • Crue-L
  • RANAMUSICA COLUMN Ryo Nakahara
  • SOUL AID
  • 予約
  • Manhattan Records Ameba Blog
  • GO TO MOBILE

日本人クリエーターが海外レーベルから続々とリリースする状況になり、完全なる成熟期を迎えた国産ダンスミュージック。日本人、というだけでオリジナリティーを得られた状況は去った現状で、ヴァラエティーに富んだダンスミュージックを生産しつつ、それぞれが世界的に評価を受け続けるMasahiro Suzuki氏。今回晴れて初のアルバムリリースを果たした彼に、曲作りに対しての率直な意見やWire2011のステージに立つにいたった等をお聞きしました。


Q: 曲作りを始めた経緯を教えて下さい。また、制作からリリースに至るまでの経緯も一緒にお願いします。


Masahiro Suzuki (以下M): 厳密に始めたとなると高校時代まで遡ります。やはり私の世代だと電気グルーヴからテクノを聴き始める流れになるんですが、昔ってCDのインナースリーヴに機材のリストが書いてあって、自然とシンセサイザーやサンプラーに興味を持つようになりました。多分今よりテクノと機材がリンクしていた時代ですね。

でも実際に作品をリリースするのはそこから10年以上経過してからになります。おそらくテクノ / ハウス系のプロデューサーで最もユーザーが多いAbleton LiveというDAWソフトとの出会いから変わったんですが、このソフトは私の頭の中で鳴ってる音が全て再現出来る!と思ったんですね。

そこで、その頃同じ職場で働いていた今はTiovita 1というユニットをやっている松村君とトラックをリリースしてみようという事になり、予定通りJNMSというユニット名でプログレッシヴ・ハウスのトラックをリリースしました。これが私の実質的なデビューになります。でもその後プログレッシヴ・ハウスは飽きて(笑)、ディープ・ハウスやテック・ハウスを作り始めてソロ名義でリリースしていく事になりました。




Q: “テクノと機材がリンクしていた時代”とおっしゃってましたが、これは具体的にどういった事なのでしょうか?逆にいうと今はそれらが“リンクしていない時代”ということですよね?

M: 例えば石野卓球さんがRolandのTB-303、Juno-106などのシンセをメディアで紹介すると、中古価格が高騰するといった事が起こったり、「テクノといったらこの機材」みたいなものがありました。

でも今は音楽制作のツールが多種多様になり、本当に人それぞれのスタイルがあるというか、これは個人的な感想ですが、昔に比べて制作環境がよりパーソナルなものになっていると思います。別に友達が少ないわけでも無いんですが、たまに制作しながらクリエイターって孤独だなと(笑)。

でも音楽スタイルと機材がリンクしなくなった事で、より個性で勝負する必要が出てきたので、その点は歓迎しています。




Q: 鈴木さんは、元々ダンスミュージックレコード(DMR)にてハウスバイヤーを務められておりましたが、その経験がDJや曲制作に与える影響についてどう思われますか?

M: マンハッタンのバイヤーさんもそうだと思いますが、週に大量に送られてくるプロモやインフォを確認してオーダーするタイトルを決めていきますよね。となると1タイトルに対してそんなに時間も掛けられず、数秒聴いて判断していくワケですが、経験を重ねていくと自分の中に基準が生まれて、より早い判断が出来るようになっていくと思うんです。

その基準っていうのが自分のトラックを客観的に見る事が出来る要素の1つになっていて、あくまで自分の基準とはなりますが、そういった意味ではバイヤーの経験が自分のトラックのクオリティーを保てているのではと思っています。でもまだ自分のトラックで「これは売れる!」と思ったものは残念ながらまだありません(笑)。



Q: そこを踏まえてなのですが、バイヤーによる“売れる、売れない”の判断と、アーティスト性のバランスで苦労されたことはありますか?例えば、斬新なものを作りたいけどマーケットが無いから売れないのではないか?みたいな苦悩とでもいいますか。。。

M: 本音を言うと、かなりブッ飛んだトラック作りたいですよ(笑)。アイディアもそれなりにありますし。でも時間が制約されている中でいかに確実にリリースへ繋げるかという事を考えると、やはりトレンドを意識した音作りになってしまいますね。

あと確かにバイヤーとしての判断も、誤解を恐れずに言えば、斬新なものを作る為に「邪魔」してしまっている部分もあります。でもこれは自身でもアーティストとしてヤバい事を自覚してるので、来年の前半は完全に自分が好きな事をトラックに反映させたものを作りたいと思ってます。受け入れられなかったら自分でレーベル作ります(笑)。




Q: 影響を受けたアーティスト等教えて下さい。

M: 聴く音楽が多岐に渡るのでリストアップが難しいですが、直接音楽的に影響を受けたアーティストとなるとヨーロッパ発のディープ・ハウスやテクノのプロデューサーという事になると思います。

最近特に注目しているのはCecille周りのアーティスト、以前のハード・ミニマルの流れから辿り着いたSandwell Districtみたいな音ですね。デトロイト・テクノとかももちろん好きなんですが、どちらかと言うとIan O'Brienみたいな一旦ヨーロッパのフィルターを通したものが好みです。




Q: 今年2011年には、WIRE2011にライブ出演されています。出演された“サード・ステージのオーディション”というのは一般公募なんですよね?

M: この話は東日本大震災の発生直後まで遡るんですが、Shin Nishimuraさんが直ぐにTwitterでPlus Recordsのチャリティー・コンピのリリースに向けて全国のプロデューサーに呼びかけを行ったんですね。

私は福島県出身という事もあり、自分に何か出来ることは無いかという事で直ぐにShinさんに参加したい旨連絡を取りました。そこで生まれたのが今回のアルバムにも収録されている“Sunrise From Northwest”という曲になります。この曲は3日ほどで完成させたのですが、自分でも好きな曲、且つ自信作の1つとなりました。

そして6月頃にWIRE11のサード・ステージのオーディションがあるというので、この曲で応募して、オーディションを勝ち進み晴れて出場という形になりました。出場という事も嬉しかったのですが、自分のトラックへの評価が1つの形となって現れた事が何より嬉しかったように思います。オーディションは一般公募です。

2次審査までは楽曲だけで勝ち進めるんですが、最終審査はパフォーマンスをする必要がありまして。そんな現場での経験も多くないのにどうしようと(笑)思ったんですが、気合いを入れてライヴ・セットを組みまして、オーディション本番ではエフェクト操作やシンセをリアルタイムにコントロールするなどライヴ感をアピールしました。結果、その内容を評価頂いたようです。




Q: 鈴木さんは、ご自身の曲の.リリースフォーマットやDJでもデジタル派ですが、ご自身のスタンスとヴァイナルでのリリースに対しての考えをお聞かせ下さい。

M: 私はバイヤーだったので、もちろんヴァイナルの音響面で優れている点、レコード針を通して聴く事が出来る音の生命力、モノとして存在する点は大変魅力だと思います。しかし私はどちらかというと変化を好む方なので(笑)、私自身のトラックのリリース形態、DJプレイについてはヴァイナルへの拘りはそれほど無いというのが正直なところです。

でもCadenza、Ostgut Ton、Dessous等がヴァイナルをリリースしているのを見ると、やはり羨ましいなと思いますね。何せまだ私は自分のトラックをヴァイナルというフォーマットで聴いた事が無いので(笑)。 それと、これはバイヤー時代にも思った事ですが、レーベル側が「コレは売れる」と判断しているタイトルはヴァイナル切ってますよね。また、最終的にヴァイナルでのリリースを想定したタイトルの選別も行っていると思います。そういった点では逆に「ヴァイナル・リリースの為のクオリティー・コントロール」という事をレーベルは意識しているんじゃないでしょうか。




Q: これまでのリリースや今回のアルバムを聴いても、ジャンルが他のアーティストに比べて多岐にわたっていると思いますが、その理由はなんですか?

M: これは正直に言うと、思いつくままにトラックを作ってリリースしているからだと思います(笑)。まあどこかのレーベル、事務所に所属にしている訳でも無いので、好き勝手に作れる環境にあるのも理由の1つでしょうか。

でも前述のJNMSの件でもそうでしたが、私は少々飽きっぽいところがあるので(笑)、色々なスタイルにアプローチする事で自分の中でバランスを取っているんだと思います。ディープ・ハウスを作りながらシンセの音色を選んでいたら、カッコイイ音が見つかってハードなテクノのトラックを作り始める、なんて事は良くある事でして。

でも最近言われて嬉しかった言葉がありまして、WIREで同じステージに立ったDJのCroziさんが私のプロモCDを聴いて、意外とテイスト的には統一されてますねと言ってくれたんです。自分でも気づかなかった点なので、やはり他の人に聴いてもらう事は大事だなと思いました。



Q: ジャンルを広くとることと、使用する機材には関係がありますか?

M: 今はAbleton Liveでディープ・ハウスもテクノも作っている訳ですが、シンセも同じものを使っているなど環境的にはあまり変わらないので、ジャンルと機材の関連性はあまり無いかも知れません。

でも今振り返るとハウスを作る時はディスコのベースをサンプリングしたり、テクノ作るときは80sのインダストリアル・ロックからパーカッションをサンプリングしてたりするので、元々私の音楽に対しての雑食性が影響しているのだと思います。




Q: ここ最近では、PCを使って、楽曲制作もDJも手軽に行えます。つまり、誰でも出来る環境です。そんな中で、世界進出を果たせたのはどうしてだと思われますか?

M: 確かに今は以前と比べてPC1台あれば楽曲制作もDJも可能になりました。

先ほど自分の中である程度基準があって、それが自分のトラックのクオリティーを保てているという事をお話しましたが、手軽に楽曲制作できる環境であっても、世界のプロデューサー達のプロダクションのレベルを把握して、且つ自分がそれに到達しているか分かっていないとリリースには扱ぎ付けられないのでは、という考えは自分にあります。

無数のミックスがネット上あり、手軽に聴ける現在、DJも同様の事が言えるのではないかと思います。




Q: これからの活動における信念、ベースとなる思いは?

N: 私は今回アルバムをリリースしましたが、曲作り、マスタリング、アートワークのデザイン等を普通に別の仕事をしながら進めてきた訳で、じゃあ、そのモチベーションは何であったかと言うと、やはり自分の頭の中にあるアイデアやメロディーを形にして表現し続けたい、というところにあるんだと思います。

だからそういった点では、クラブ・ミュージックをやってはいますがアルバム・アーティスト向きでもあると思っていて、正直時間されあれば、1年に3枚はアルバムを作れると思います(笑)。

この思いはこれからの活動においても変わらないでしょうね。




Q: 今後の活動について教えて下さい。

N: UKのAdaptation Music、チュニジアのFever Sound Recordsなどからのリリースを控えていますが、スタイルとしてはディープ・ハウス、またテック・ハウスです。

11月にイタリアのReady 2 Rockから出したEPはストレートなテクノだったので、リスナーの方にはまた混乱を与えそうですが(笑)。 最近はFacebook、Myspaceなどを通してコンピへの参加などもオファー頂いていて、来年頭にはリリースされるのではないかと思います。

今回アルバムをリリースするに当たって、楽曲制作は一区切りした感もあるので、今後はDJ / ライヴ活動により力を入れていきたいと思います。私のライヴ・セットはアルバムの後半、DJセットは特典のミックスCDで聴けますので、このインタビューを読んで頂いているオーガナイザーの方はもし引っかかるものがあれば是非オファーお願いします!





Interviewer : Yuka Noguchi (Manhattan Records)




MASAHIRO SUZUKI
MASAHIRO SUZUKI
https://masahirosuzuki.com
https://www.myspace.com/mavericksupanova
https://twitter.com/#!/masahirosuzuki
https://www.facebook.com/pages/Masahiro-Suzuki/145858538847318

2008年にプログレッシヴ・ハウス・ユニットJNMSでデビュー。ソロ名義ではいきなりイタリアの名門レーベルNeurotraxx Deluxeからリリースし、DJ Wada、Ryo Tsutsui、Juzu aka Moochyなどを始め、Aki Bergenら世界のDJがプレイし、Masahiro Suzukiの名を広める事となった。その後もNite Grooves、Black Vinylといった老舗レーベル、オランダ、オーストラリアからとリリースを続け、Friskey Radioなど有名ネット・ラジオ局のプレイリストにも度々取り上げられる。彼の音楽性の特徴として、1つのスタイルに拘る事なく、ディープ・ハウスからカッティング・エッジなテクノまでこなす点だが、2011年、テクノ・サイドにおける評価の結果として国内最大級レイヴ“WIRE”への出演が挙げられる。数回のオーディションを勝ち抜き、横浜アリーナのサードエリアにて披露したライヴは、サウンド面ではもちろん、エンターテインメント性においても高い評価を受けた。そして年内はNihil YoungのレーベルReady 2 Rock、チュニジアのテック・ハウス・レーベルFever Sound Recordsからのリリースを予定しており、今後更なる飛躍が期待される。


PAGE TOP